第4回 国際ドローンシンポジウム
第4回 国際ドローンシンポジウム 講演者インタビュー

株式会社デンソー 技術開発センター Robotics 開発室 室長
加藤 直也氏

 国際ドローンシンポジウムでは、ドローンの様々な活用方法についての最新の事例を講演者に発表いただきます。株式会社デンソーの加藤氏のテーマはインフラ点検におけるドローンの活用です。デンソーといえば、自動車部品が思い浮かびますが、なぜドローンの開発を進めているのでしょうか。

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第4回 国際ドローンシンポジウム 講演者インタビュー
──今回の国際ドローンシンポジウムでは、S1「測量・i-Construction・インフラ分野」でご発表いただきますが、なぜデンソーがドローンの事業を始めたのでしょうか?

 デンソーでは、ドローンを橋梁などのインフラ点検に活用しようと取り組んでいます。取り組むことになった理由は2つあります。

 1つは、今後進展するコネクティドカーの時代に、道路インフラが情報のハブとして活用が進むことが考えられます。弊社は自動車産業を中心とした事業ですが、道路インフラ企業の皆様とも関係構築をしていく必要がある。その入口のひとつとして、点検分野で貢献しようと考えた。道路を健全に保つことは、クルマ社会の安心安全に貢献できます。道路インフラの安全と安心のために、ドローンを活用しようというのが理由の1つです。

 もう1つはデンソーの研究所の中で、今回発表する「可変ピッチシステム」というものがシーズ技術として、既に研究されていたことがあります。詳しくはシンポジウム当日にお話ししますが、このシステムによって、風が吹いていてもドローンが揺れにくく、風に飛ばされにくくなります。この2つの理由によって、ドローンに取り組むことにしました。

──ドローンを事業化する上での苦労は?

 まだ事業化しておらず、開発段階です。 世間を見ても、大企業がドローンを事業化しているケースはまだそんなにありません。事業規模としてまだまだ小さい。他社さんの動向も見させていただいていますが、規模感ある事業として成立させることに苦労されているように感じます。

 弊社では、サービスも含めたパッケージとしてドローンを事業化する予定ですが、サービスも含めて開発し、ビジネスモデルを描くのが難しいですね。

──国際ドローンシンポジウムでは、国が示すドローンのロードマップに従って、講演内容を構成しています。加藤さんには、「インフラ維持管理」のテーマになりますが、インフラ分野でのドローンの活用状況はどうなのでしょうか?

 現状では、乗り越えなければいけない課題があります。土木測量や橋梁点検で言うと、国交省が出す測量要領や点検要領に「ドローンの活用」を記述していただくことが必要なのですが、まだまだ実力不足です。測量については、i-Construction の一部としてドローン活用が認められたばかりだし、橋梁点検では、依然として近接目視が要求されています。

 したがって、現時点でのドローンの導入が見込めるのは、i-Construction 測量と私有地インフラ、例えば工場外壁などの点検だと思います。

 ですが技術開発としては、橋やダムの点検が、技術としては一番難しく、そこを我々が「安全にきちんとできる」と証明しなければいけないと思って取り組んでいます。

──インフラ点検については厳しい基準があるのですね。

 特に橋梁など構造体の点検では、損傷の見逃しは落橋や落壁などの大事故につながります。近接目視は見た点検士が点検と判断に責任を負いますが、ロボット点検では見逃しが許されません。その確実性の担保を得るには数多くの実績が必要と思います。また点検中の衝突や墜落による被害に対する懸念も大きいです。この安全技術や運用方法の開発にも力を注いでいますが、社会的に認知されるためにはやはり多くの実績が必要と思います。

 しかし、一方で、インフラの老朽化がいたる所で進んでいる現状があります。また点検士の高齢化や減少も大きな問題です。目視点検を全国全ての場所でおこなっていくことが困難になるかもしれない。それに対する備えとして、ドローン点検の開発と導入促進を進めていくべきだと思っています。

──今回の講演のテーマ(「非GPS 環境におけるインフラ点検用UAV の自動飛行技術と橋梁点検への応用」)にもあります非GPS 環境での自律制御、そして、衝突回避、また物流の着地も技術課題として挙げられています。非GPS 環境での自律制御の実現状況は?

 今は「実験的に成功しました」という段階ですね。これから、どこまで汎用性があるかを検討しようと進めています。シンポジウムでは、「ここまではできる」と話ができればと考えています。可能にする技術はできたので、あとは汎用として、どこまで使えるか。そこを検討している段階です。

──衝突回避についてはいかがでしょうか?

 衝突回避はもともと研究を進めていたことですので、いわゆる自動飛行とそれに介入する衝突回避については、優先順位などをアルゴリズムで決め、稼働させることができると思っています。自動飛行と衝突回避はそれぞれ実験で成功していますので、次は、それを組み合わせた時の検証をしなければいけません。それについては、次に開発している機体で実装し、検証をおこなう予定です。次の機体が事業化につながる機体だと考えています。

──インフラ点検での飛行の特徴は?

 インフラ点検では、飛行機の操縦と同じで、離陸と着陸はマニュアルでおこなう。そして、航路に入ると自動で飛行する。なぜ、全てを自動で離着陸をすることを考えていないかというと、インフラ点検では離着陸のポイントが必ずしも自動離着陸に適した場所である保証がないからです。

 さらにご理解いただきたいこととして、自動飛行中であっても操縦者は、機体状態と飛行テレメトリに集中し、異常時にはすぐにマニュアルに戻して帰還させることが重要です。近接飛行がベースになるので、高い技能と安全意識が必要です。

──インフラ点検をして、解析をすると伺っています。解析とはどのような技術でしょうか?

 基本的には点検の対象物を3D データ化して、点検結果をマッピングしていきます。その話もシンポジウムでしようと思っています。

──詳しくは講演の中でということですね。最後に受講される方へのメッセージをお願いします。

 私たちが事業化しようとしている製品を実際に使われるのは土木関連の方ですので、その方々には特に興味を持ってお話を聞いていただけると思います。しかし、ドローン一般に興味を持ってらっしゃる方がご参加いただいても、何か得るものがあるのではないかと思います。

 実際にこの製品に関わる方は、発注者である市町村の土木課の方々、発注を受ける土木コンサルタントの方、それから、コンサルタントから細かく指示を受けて点検を行う現場の方だと思います。私たちの直接のエンドユーザーはその現場の方になりますが、土木コンサルタントさんもその効果を感じていただければありがたいと思います。

 ドローンについては、今後、その安全運用の方法などについても、さらに周知徹底していかなければいけないと思っています。安全運用をしっかりと世の中に広めていかないといけない。つまり、ドローン操縦と運用の教育ですね。

 確かに今も世間には、ドローンスクールがあるのですが、私たちが開発しているプロ機ではもっと厳しいカリキュラムになります。クルマの免許を取るのに3 週間かかりますよね。それなのに、ドローンがなぜ2日で良いのかということです。

 測量や点検や農薬散布など、ドローンの活用方法によって、それぞれの教育が必要だと思います。今後はさらにドローンの活用方法が増え、学ぶことも増える。今は、まだそこまで教育体制ができていません。

 ドローンを持つといろんなことをやりたくなりますが、できることには限界があります。しかし、それを乗り越えて使ってしまう人もいる。それはダメだと明示する必要があります。何ができて、何ができないか。ドローンにはルールがあって、それに対して教育が必要だという当たり前のことです。そういうルールについてもシンポジウムでは話ができればと考えています。

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