昨年度よりスタートした長期コース「タレントマネジメント研究会」のトータルコーディネータを始め、各コースをご担当頂いている㈱インストラクショナルデザイン代表取締役社長で、ATD-IMNJ(InternationalMember Network Japan)理事(副代表)の中原孝子講師にお伺いしました。
(2019年6月発行のJMA関西便り2019夏号より ※内容はすべて取材当時のものです)
テクノロジーの進化が事業のあり方や業務プロセスに大きな変化をもたらしているように、人事もその例外ではなくなってきました。HRテクノロジーを導入したり、導入を考えたりしている企業も多いのではないでしょうか。一方、テクノロジーを導入しただけでは、適切な人事戦略を提供できていることにはなりません。
第4次産業革命で生き残っていける組織の条件として、
・テクノロジーを使って高い生産性を創りだしていること
・国を問わず、有能なテクノロジー人材を引き付けることができる「組織」であること(エンゲージメント、エクスペリエンス指数が高い)
・多くのデータを収集でき、データに基づいたスピーディーな決断が出来ること
と言われています。
クラウド技術が進化した今、人材の採用やプロジェクトにおいても国境がなくなりつつあります。AI技術を活用した人事機能へのテクノロジー導入に加えて、人事の役割が単に労務管理や人材管理に関わるアドミニストレーションから、組織が持てる人材のデータを経営に活かすための戦略思考と、問題解決を導くコンサルティング機能を大きく強化していく必要があるのではないでしょうか。
ATD(Association for Talent Development)は、組織における職場学習と、従業員と経営者のパフォーマンス向上を支援することをミッションとした世界最大の会員制組織です。そのATDが毎年1回開催しているICE(International Conference & Exposition)は、人材開発分野では世界最大規模のカンファレンスで、世界中から10,000名以上の人材開発関係者や専門家が参加します。今年度は、5月19~22日にワシントンD.Cで開催されました。
また、関西では、ATD-IMNJ関西チャプターとしての活動があり、今年度からはJMA関西と共催で報告会等を開催します。まずは、7月にATD-ICEの報告会を開催し、ICEに参加して得たトレンドやATDからのメッセージなどを共有したいと思います。ご興味のある方は是非ご参加ください。
初開催だった昨年度は、グローバル企業として伍していくための人材戦略や、未来(2030年)における人事の役割と題したテーマで研究をしていただくなど、今大きな変化に直面している経営環境に対して、人事として知っておかなければならないテクノロジーや戦略の考え方を討議しました。前回に引き続き、海外の専門家とのWeb会議システムを通じたリアルタイムディスカッションやソーシャルネットワークテクノロジーを使ったコミュニティ活動など、参加者自ら今あるテクノロジーを使いながらデジタルトランスフォーメーション(DX)時代における人事の在り方を議論したいと思います。
さらに今年度は、『DATA-DRIVEN HR』(バーナード・マー著)の翻訳本となる『データ・ドリブン人事戦略』(中原孝子訳、日本能率協会マネジメントセンター、2019.6.19刊行予定)も参考にしていただきながら、DX時代の人事、テクノロジーと人事戦略をどう結び付け、どのような知識が必要になっているのかを包括的に学んでいく機会にしていただければと思います。
中原 孝子
(株)インストラクショナルデザイン代表取締役社長
ATD認定CPLP(Certified Professional in Learning and Performance)
ATDインターナショナルジャパン理事(副代表)
国立岩手大学卒業後、米コーネル大学大学院にて、教育の経済効果を学び、外資系製造販売会社、金融機関、IT企業にて人材戦略部門のマネジャーを歴任する。2002年5月に株式会社インストラクショナル デザインを設立し、人材育成計画全般や効果的な研修設計と効果測定実施のためのインストラクショナルデザインの支援、パフォーマンスコンサルティング(Human Performance Improvement、翻訳書「HPIの基本」)、グローバルタレントマネジメントの規格運営支援なども行っている。ATD(米国人材開発機構)インターナショナルジャパン理事(副代表)も務める。