外国人材に関するセミナーをご担当いただいている一般社団法人キャリアマネジメント研究所代表理事の千葉祐大講師にお伺いしました。
(2019年1月発行のJMA関西便り2019冬号より ※内容はすべて取材当時のものです)
日本人よりも優秀な人材を活用できる点があげられます。日本の大学で学ぶ留学生であれば、3か国語を話せるのは普通で、5か国語以上を操れる方も珍しくありません。また、社内にイノベーションが起こりやすくなることもよく知られています。新しい発想というのは、価値観が違う人同士のぶつかり合いによって生まれます。同質性の高い組織や集団では、革新的なアイデアは生み出せないのです。加えて、既存の日本人社員、若手社員に刺激を与える意味でも外国人材の活用は有益だと思います。
まずは外国人材を積極的に活用していこうという「覚悟」を決めることです。日本人の代わりとして消極的選択で外国人材を受け入れているうちは、活躍させることはできません。自分の存在価値が見えない会社で力を発揮しようなんて誰も思わないですから。
そして、受入れ態勢づくりと制度変更にも着手していく必要があるでしょう。今はまだ、受け入れ側のマネジメント層に、外国人材と働いた経験がない人が多数を占めます。そのため外国人材にも日本人とまったく同じ対応をしてしまい、行き違いが生じるケースがよく見受けられます。また、日本企業は昇進スピードがとても遅いので、「キャリアパスが見えない」「こんな会社にいても成長の可能性を感じられない」とすぐに見切りをつけて辞めてしまう外国人材がたくさんいます。
現在は、外国籍社員にも日本人とまったく同じ新入社員研修を受講させている企業がほとんどです。ただ、これではあまり効果は見込めないと思います。なぜなら、外国人材は日本人とは「前提となる常識」が異なるからです。
たとえば、ビジネスマナーの講義で、「お客様に挨拶するときは45度の最敬礼をしてください」と指導するとします。
日本人であれば、「挨拶のときはお辞儀をする」のが常識ですが、お辞儀をする習慣がない国から来ている人もたくさんいるので、「なぜ挨拶のときにお辞儀をするのか」「なぜ深いお辞儀をしたほうがいいのか」といったことを根源的に教えなければならないのです。
このように外国人材に日本のマナーやルールを教えるときは、理由と目的を日本人以上に丁寧に教えなければなりません。そのためこういった研修は、外国籍社員だけを集めて、日本人社員向けとは違った内容で実施したほうがいいのです。
千葉 祐大
一般社団法人キャリアマネジメント研究所代表理事
大学卒業後、花王㈱の人事部門、化粧品部門でキャリアを積む。2002年からは化粧品部門の中華圏担当責任者として、香港、上海の現地スタッフをマネジメント。2006年からコンサルタント・講師業を始め、全国の企業、自治体、教育機関等で年間200日以上、主に「グローバル人材」に関する研修を行っている。59か国・地域、延べ6,000人以上の外国人留学生を指導した経験があり、異文化交渉・コミュニケーションについては人後に落ちないと自任している。
人気シリーズの最新刊「異文化理解の問題地図」(技術評論社)を2019年3月に刊行。