開催概要
対象
・英語技術文書の取り扱いがある方(マニュアル作成・Eメール・英訳/和訳・情報収集など)
・英語でのやり取りの回数を最小に抑え、業務効率の改善を図りたい方
・英語に自信がないが、確実に情報を伝えたい方
・英語に自信はあるが、相手の英語力が低くて伝わらない場合がある方
※一般的なビジネスイングリッシュとは異なるため、技術英語に初めて取り組む方は基礎編からの受講をおすすめします。
技術英語とは?
技術情報の伝達に特化した英語で、英文テクニカルライティングとも呼ばれます。目的は、最小の語数で、わかりやすく、正しく伝えること。すなわち、「簡潔、明確、正確(Concise、Clear、Correct)」なコミュニケーションです。
日常英語(ビジネスイングリッシュ)のスキルでは補えない技術的な内容(製品取扱説明書、仕様書、契約書、特許文書等)に対応できるスキルです。
Clear 明確に
◆ 1回のリードスルーで理解できる英文
◆ 伝えるべき内容の論理関係を明確にした英文
◆ 具体的でわかりやすい語句と構文
Correct 正確に
◆ 的確な名詞や動詞が使われている英文
◆ 文法ミスや数字の間違いのない英文
Concise 簡潔に
◆ 可能な限り少ない語数で伝えられる英文
◆ 簡潔な語句で言い換え、より直接的に表現された英文
◆ 読み手の負担を最大限減らした英文
開催のねらい
説明書や仕様書等での技術情報のやり取り、従業員への伝達が必要な場では、会話等のコミュニケーションのなかでニュアンスを伝えたり、汲み取ったりするのではなく、端的に情報や事実を伝えなければなりません。
しかし、日本人には端的でわかりやすい文章であっても、それをそのまま英訳してしまうと、海外の取引担当者や外国籍従業員にとっては回りくどく、伝わらないものになってしまうことが多々あります。
―正しい文法、正しい語彙で英訳しているにも関わらず、なぜ思ったとおりに伝わらないのか?― 技術英語はその課題解決に役立ちます。
簡単な言い回しで正確に伝わる英語のポイントを知り、理論上ではなく実践で使える技術英語を学ぶことをねらいとして開催します。
【I:基礎編】
技術英語の基礎を学ぶ講座です。
「国際語としての英語」には必要最小限の英語力で、技術情報を正確に効率よく伝達するためのポイントを学びます。
また、 英語に自信がある方であっても、英語力の低い相手にどのように合わせるべきかを学ぶことができます。
【II:中級編】
3つのC - Clear, Concise, Correct - を満たした英文を、より実践的に練習します。
個々の文書の目的に合わせた、効果的な情報提示の方法を学びます。
技術英語を使用したシンプルな表現の事例 ~あなたは相手に伝わる表現を使っていますか?~
【例1】
原 文:最近発売された新モデルには、合計五つの新機能が追加されている。
直 訳:A total of f ive new functions have been added to the new model released lately.
整理した表現: The new model has five new functions.
解 説:原文には冗長な表現が多く、結果として直訳するとムダに難しい英語になる。必要な情報のみで英文を書けば、より伝わりやすくなる。
【例2】
原 文:安全の確保を目的として、保護ブタと電源スイッチの間にはインターロックが設けられている。
直 訳:An interlock is provided between the protective lid and the power switch for the purpose of ensuring safety.
整理した表現(仕様書向け): The power switch shall be interlocked with the protective lid.
整理した表現(指示書向け): Check that the protective lid is closed. For your safety, the power switch is interlocked with the protective lid.
解 説 : 内容が同じであっても、文書の種類によって表現を変えるべき例。仕様書向けの表現ならば、要件を定義するスタイルとしてshallを用いる。また、読者もエンジニアなので「インターロックは安全性確保のため」という情報は当たり前なので削除。指示書向けの場合は、ユーザ目線で情報を整理する。「あれ、電源スイッチが入らない。なぜ?」という場合に読むFAQをイメージした表現になっている。
参加者の声
・英語を難しく考えすぎていたことに気づかされました。シンプルが一番よく伝わることがわかりました。(機械・設計部門)
・技術英語の考え方、表現の仕方、似ている単語の使い方が理解しやすかったです。(医療機器・技術部門)
・英語力の前に、日本語をいかに適切に要約できるかも重要なことに気づきました。(エネルギー・技術部門)
・ a とtheの使い方の違いが今まであいまいだったがとてもよくわかりました。(電気機器・品質保証部門)
プログラム
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項目 |
内容 |
1日 I(基礎編) 10:00~17:00 |
【1】技術英語(テクニカルライティング)に必要な要素 - 3つのC |
●Clear - はっきり書く
●Concise - 短く書く
●Correct - 正しく書く
≫技術英語(テクニカルライティング)に必要とされる、3つの要素の概要を学びます。
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【2】ムダを省いて英語化する |
●情報の順位付けを行う
●強い動詞を使う
≫原文中のムダを省き、少ない語数で英語化する方法を学びます。語数が少なければミスも減ることから、正しく伝えることにもつながります。
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【3】原文の形にこだわらない |
●目的に合ったスタイルを選ぶ
●できるだけ能動態を使う
≫単なる構文置き換えでは、意味は正しく伝わりにくいもの。文書の目的を見据え、書き手にとっては書きやすくミスをしにくい表現、読み手にとっては分かりやすい表現を、積極的に選ぶ練習です。
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【4】情報を正しく伝えるために |
●冠詞と可算・不可算
●副詞・助動詞
≫冠詞は日本語に存在せず正体がつかみづらいもの。副詞や助動詞は意味を誤って覚えていることが多いもの。それぞれの言葉の本来の意味を整理し、情報伝達に影響する間違いと、簡単で正しい使い方を明らかにします。
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1日 II(中級編) 10:00~17:00 |
【1】基礎編の復習 |
基礎編で学習した、テクニカルライティングの3つのC(Cleare, Concise, Correct)の概念を復習します。また、3つのCを実現するために気を付けるべきポイントを復習します。
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【2】より少ない語数で正確に表現する練習 |
無駄に長い英文を、効率の良い読みやすい英文に書き直す練習をします。表現を変えてもニュアンスを変えないためのポイントや、よりクリアに情報を伝えるためのポイントを学びます。
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【3】情報提示の基本 |
分かりやすい情報提示の基本として、時系列や空間配置を的確に意識した表現を練習します。日本語を訳すのではなく、シンプルな図形を最初から英語で表現する演習も行います。
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【4】文書の種類とスタイル |
指示書・仕様書・カタログといった、異なる種類の文書に合わせて、適切なスタイルで表現する練習をします。読者をイメージし、読者にとって読みやすく使いやすい文書を作成するコツをつかみます。
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※プログラム構成・進行スケジュールは一部変更となる場合があります。
ご案内
講師紹介(敬称略)
平野 信輔
(公社)日本工業英語協会 専任講師
(工業英検1級取得実務翻訳者)
定員
I:基礎編:35名
II:中級編:15名
※参加定員の関係でご参加いただけない場合は折り返しご連絡いたします。