特別インタビュー(1) その2
「日本の生産技術者だからできること」
|
 |
延岡健太郎
一橋大学 イノベーション研究センター長 教授
(敬称略)
|
安部武一郎
一般社団法人日本能率協会
|
 |
-ものづくりが「価値づくり」と結びついていないという難しさが起きているのは
どうしてでしょう?
理由はふたつあります。
ひとつめは、競争があるからです。
常に競争によって商品価値が低下するということはおこっていましたが、
ここ20年程前から、競争が商品価値を台無しにしてしまうという影響力が
とてつもなく大きくなってきました。
どんなに商品として素晴らしくても、
競合がほぼ同じような製品を作ることができる場合は、「価値」に結びつかなくなります。
例えば、薄型テレビも太陽電池パネルも商品自体はすばらしいものづくり力によってつくられている
のですが、競争のために利益が出にくくなっています。
-ふたつめの理由はなんでしょう?
ふたつめは、お客さまが喜んで買う価値自体をつくるということが難しくなっています。
かつては、良い品質で商品をつくることが「価値」に結びついていました。
今は、「いままでにない価値」を作り出すことが必要になっています。
-どうすれば、ものづくり企業の力を価値づくりに結びつけることができるのでしょう?
ひとつには、持続的に差別化をはかる、独自性を持つということが挙げられます。
ふたつめは、お客さまの求める価値を提供するという意識を強く持つことです。
-それらは、学習すればできるようになることなのでしょうか?
簡単ではないですね。
日本のものづくり企業は横並びの競争が好きで、技術トレンドがあると同じ方向にいってしまう傾向が
あります。本当は、他社と違うことをやるほうがリスクが少ないはずなのに。
-横並びの競争をしてしまうんですね。他にもありますか?
簡単ではないという理由は、企業に「価値づくり」をしてほしいと望んでいるはずの株主も
「なぜ同業他社がやっている領域に投資しないのか」と言ったりすることが多いからです。
-それは難しいですね。
さらに難しい理由は、経営者も他社と同じことをしているほうがリスクが少ないと思っていることです。
もし利益がでなくても、自社だけが悪いのではなく環境が悪かったと言い訳がしやすいのでしょう。
-お客さまが求める価値をつくるのは難しいですか?