生産技術者戦略会議

特別インタビュー(3) その2

「EMS/ODM/OEMの使いこなしと技術流出」

安部武一郎
一般社団法人日本能率協会
野元伸一郎
日本能率協会
コンサルティング
シニア・コンサルタント
(敬称略)
特別研究セッションの「聴きどころ」を日本能率協会の安部武一郎がインタビューする2回目です。
-生産技術者の方とお話をするとODM/EMS、それからOEMの使いこなしを課題としている方が多くなっている感じがしてます。

例えば、日本のテレビメーカーのなかでは、採算をあげているのが東芝さんだと思うのですが、ODM/EMSの使いこなしという点も要因としてあると思いますか?
あると思います。日本の会社の中で、ODM/EMSを最も早く使い始めた会社のひとつが東芝さんですね。

ただし、ODM/EMSを活用すると言っても、 実は非常に取り組むのが難しいんです。経営者は単純にコストが安くなるんじゃないかと考えるかもしれませんが、簡単ではない。 ODM/EMSに良い設計をしてもらって、自社の考えるモノづくりをしてもらって、なおかつ安く製造してもらうことは、自社で設計・製造するよりも難しい面もあります。

ですので、ローカルのワーカーに良い設計をしてもらうための技術トランスファーであるとか、レビュー力であるとか、品質をサポートするマネジメント力であるとか。 そういうところが、今までになかった開発設計、生産技術者の新ミッションになると思います。
-新たな役割ですね。
そうすると今までになかったパラダイムで、技術者が行動しなければならないので、そのための教育であるとか、相手先の文化や気質の理解が非常に重要になってくる気がします。

そこで、東芝さんがODM/EMSを活用して収益をあげている。ローカルなODM/EMSベンダーとのつきあい方という点のヒントを聴いてみたいと思います。
-そうですね、現在、ODM/EMSの活用をさかんに検討されていますが、先を見据えて先進的な取り組みをされてきた、その中で培ってきたノウハウを参考にしたいですね。
日本以外のメーカーは、そういう取り組みが早いところがあります。
例えば海外のパソコンメーカーなどはODM/EMSを使うことをが4年も5年も早く取り組んでいて、そういう相手と、戦わなくてはいけない。過酷な戦いですよね。
そういう意味では東芝さんの前線でどのように戦っているかというのが参考になると思いますね。
-一方で、ODM/EMSを使いこなすことができたとして、メリットばかりではないですよね?
ODM/EMSを使い続けていくと数年後には、自社の技術力が落ちていく可能性がありますね。
日本に工場のない企業の生産技術者が技術力を落とさないためにはどうしたらいいか?技術力を落とさないためにはどういうことを考えているかということは東芝さんも含めて各社さん悩みがあると思うので、そのための取り組みについて聴いていけたらと思います。

生産技術者の技術力低下の対策はどこの企業でもあてはまるのではないかと思います。 デンソーさんもODM/EMSではないですけれど、工場は海外にどんどん出ていますよね。 生産技術者の技術力が落ちないようにという取り組みというのはうかがってみたいですね。
-なるほど。ODM/EMSのほうが最新の設備や多くの従業者を持っている場合も多いでしょうから、パートナーとして共栄すると考える必要がありますね。 そのヒントも得られればと思いますが。
-ありがとうございました。次回は「国内外生産比率と内外作区分」というテーマで特別研究セッションの聴きどころをうかがいます。
生産技術者戦略会議は2012年10月19日開催です。ぜひ、「これからの生産技術者の役割」のディスカッションにご参加ください。 参加お申込みをお待ちしています。