特別インタビュー(1) その1
「日本の生産技術者だからできること」 |
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延岡健太郎
一橋大学
イノベーション研究センター長
教授
(敬称略) |
安部武一郎
一般社団法人日本能率協会
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ご講演の「聴きどころ」を日本能率協会の安部武一郎がインタビューしてきました。延岡先生からの「生産技術者の皆様に向けたメッセージ」をどうぞ!
-まずは、先生のご研究テーマについてお聞きかせいただきたいと思います。
ものづくり企業の「価値づくり」というテーマです。
もともと、ものづくりの目的は価値づくりでした。
しかも、ものづくりをうまくやれば利益などの価値づくりにも自然に結びついていました。
ところが最近、ものづくりが価値づくりに結びつかなくなったので、
価値づくりを別に考えなくてはならなくなったということです。
それはなぜか?ということと、うまくいくにはどうすれば良いか?ということをテーマに研究しています。
-企業の「ものづくり」とは商品企画、技術開発、生産・製造も含めたものづくりですよね。
「ものづくり」による「価値づくり」には、どのような重要性があるのでしょうか?
世間ではあまり明確に言われませんが、企業の「価値づくり」は、
国全体、社会全体を良くしていく源です。
例えば、世の中にある10,000円の材料をうまくつかって、商品企画し、技術を投入し、
生産することで、お客さまが100,000円払って手に入れたいという製品を作ったとします。
その100,000円と10,000円の差、90,000円をつくりだすのが「価値づくり」なわけです。
この価値から営業利益が生まれ、法人税となって、福祉や被災地にまわっていくのです。
また、研究開発費や給与にもなります。給与がたくさんでて、誰かがお酒を飲めば
酒税として世の中にまわっていくわけですね。
-なるほど。
つまり国の財政ともつながっていて、こうした社会の流れの原動力を持っているのが、
企業の「価値づくり」なのです。
ですから、企業の「価値づくり」は社会全体を良くするためにとても重要なものですが、
その位置づけがなぜかあまり明確でないですね、世間では。
-それで、ものづくり企業による「価値づくり」が重要になっているのですね。
そうです。
-ものづくりが「価値づくり」と結びついていないという難しさが起きているのは
どうしてでしょう?